ステージングの威力

私は日本に住んでいる際、引っ越し魔でした。嗚呼、ダメな賃貸貴族。首都圏に育ち、大学を出てからは、渋谷区→新宿区→世田谷区→杉並区→(中略)→藤沢市→鎌倉市→茅ヶ崎市。前半はマスコミ時代、後半はフリーランス&予備校講師時代。都会在住時代と、湘南在住時代。そんな引っ越し時代、好きだったのは、住宅間取り図を眺めること。日本だと結構それだと思いません?何平米あるのか。どんな間取りなのか。結構気になるところですよね。賃貸も分譲も、まぁ普通は空っぽでの販売か賃貸になりますので、モデルルームを見ても「ふ~ん。あっそう」ぐらいな感じだったのですが。モデルルームの素晴らしさ、インテリアの素敵さで購入や賃貸を決めたことはありますか?日本ではどうもそれはアメリカに比べて少ないような気がします。アメリカ、ハワイでの不動産売買において、視覚と直感を最大限に利用した戦略的販売は不可欠です。人の第一印象は数秒で決まるという有名な研究があります。3秒とも6秒とも諸説ありますが、いずれにしても10秒しないのです。その物件がどれほど魅力的なのか、どんな間取りでどんな利点があるのか、延々説明し案内する前に、見に来た人の印象は既に決まってしまっています。素敵なのか。そうではないのか。好きなのか。そうでもないのか。

 

ハワイでは物件売り出しの際に、よくステージング(Staging・演出)が行われます。これはその物件をより魅力的に見せるための、要するにレンタル家具のデザインと配置、演出のことを指します。からっぽの、あるいはごちゃごちゃした部屋よりも、素敵なリゾート感あるスタイリッシュなインテリアで演出した部屋は、驚くほど素敵に魅力的に見えます。もちろん、物件に興味を持った人に案内する場合、「これはステージング(演出)のレンタル家具で、物件には含まれません」と説明しますが、「わぁ~!素敵!」という感情の高ぶりは、なかなか変わりません。好意好感といった肯定的な感情が、物件購入の意思決定のための引き金となっていくわけです。これは理性ではなく、感情。神経科学、精神科学においても立証されている理論です。

 

 

ひとつの例をご紹介します。この記事の写真は全てその物件のビフォーアフターです。

 

ハワイ島コナの中心にある住宅地で、3ベッドルームの戸建てを売り出しました。大きなきれいな芝生の庭と、売主も欲を出さずに妥当な価格付け。当時、とても強い売り手市場だったために、まぁステージングをしなくても十分に売却できるだろうと最初は判断しました。ところが、内覧の申し込みが殺到すると思ったのが、思ったほどではありませんでした。引っ越しを視野に入れた売主は、多くの家具を既に処分し、物件の中はかなり殺風景。内覧の案内をしていると、平均して10分程度で皆見終わることに気づきました。それも、こちらがかなり懸命に、いろいろ物件の利点を説明するのですが、見に来た買い手は少し退屈そうにすら見えました。「わぁ~!素敵!」という言葉は一度も聞くことがなくー。

 

2か月後。売主は、どうしてもアメリカ本土に転居し売却したかったのですが、なかなか売れません。わたしたちはステージングを導入してはどうかと提案しました。ステージングの予算は、ワンルームのコンドミニアムから、大きな戸建てまで、広さによってもちろん異なります。また、大きな家具(ベッドやソファ)を搬入する必要があるのか、あるいは、アクセサリー(置物や、壁のアート、ベッドのカバー類など)中心で済むのか。その規模によっても大きく異なってきます。1000ドル~4000ドル程度が通常です。決して安い経費ではないのですがー。

 

 

いったんマーケットから外した物件を、ステージングを終えて、写真撮影をしなおし、再度MLSにも掲載し、販売を開始したところ、驚いたことに電話が鳴りやみません。本当に。連日5件、6件の内覧を立て続けに行い、そして気づいたことは「わぁ~!素敵!」の声が多いこと。そして、内覧にきた人たちが、以前はほんの10分程度だった滞在が平均すると30分近くなったこと。家に立ち入った瞬間から、「わぁ~!素敵」→好感→もっと知りたい。この心理が働いたのでしょうか。結局複数の購入申し込みを受けるに至ったのですが、その中でも成約に至った買主さんは、初回の訪問で1時間以上滞在。さらに「どうしてももう一度見たい」と、その翌日に再度訪問し、またさらに1時間いたほどです。そして結局、再販売からわずか2日で、売主の希望価格以上での成約となりました。もちろん、ステージングだけが要因ではなく、その時の市場の状態は刻々と変化しますので、様々な原因が重なり合ったことは間違いありません。しかし、ステージングによる効果は少なからずあったものと思えます。

 

 

このように、ステージングは非常にパワフルな販売戦略といえます。物件売却の際に、「でもレンタルでしょう」「だって購入者はその家具は含まれないってわかるわけでしょう」ーごもっともな理屈です。ですが、それは理屈だけではない心理が存在します。「わぁ~!素敵!」という好感的第一印象は、将来にわたって変化することが極めて難しく、それはさらに「購入の引き金」へとつながりうるのです。物件ご売却をご検討するオーナー様には、こちらで戦略的なステージングやプロフェッショナルな写真撮影など、ご資産を最大限に魅力的に見せるようご提案いたします。ぜひご相談ください

 

 

最後に、YouTubeにビフォーとアフターのビデオがありますのでそちらもどうぞ。

▶ビフォービデオ

 

 

▶アフタービデオ

 

 

Aloha from the island of Hawaii

Setsu Arai Stack

 

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